本家カンバンの手帖ギャラリー
その8 ノン・スモーキン・ブギ

湖西市入出 2005.08.11
 浜名湖の西岸に位置する入出(いりで)集落に行くと、村の中のあちこちにこういうカンバンが掲示されています。地味、というか集落風情に溶け込みすぎてて、普通だと見過ごしてしまいそうなものですが、なんの変哲もないこんなカンバンにも、掲示された理由があるのです。
 昭和初期に発刊された「村の教育 入出村読本」に、その由来が書いてあります。以下、現代語訳。

 本村は明治27年2月、、口にするのも忌まわしい大火災に見舞われた。その当日は西風が強く、見る間に四方に燃え広がり、容易に消すこともできないほどだった。当時、消防組はあったものの、消火器具や器械は不完全、消防夫も熟練でない。おまけに、今まで村民はこんな大火災に遭遇したことがなかったので狼狽し、自分の家を守るだけで精一杯。火は猛威を奮い、ついに43戸70余棟を焼失した。
 この悲劇を反省した村民は、以下の規約を定めて厳守させたのである。
一、何人を問わず本村内、屋外において咥えキセル・タバコ、焚火をなさざること
(以下略)


 「屋外禁煙」のカンバンは、この規定がそもそものルーツ。入出には防火思想が根付き、大正15年には「全国に比類なき32か年無火災の名誉ある表彰を受ける」に至ったそうです。
 さて、禁煙のカンバンと聞いて、三遠南信専門家がまっ先に思い浮かべるのがこれ。長野県じゅうに設置された、社団法人日本禁煙友愛会の標語カンバン。禁煙といっても、上は火災防止でこちらは健康増進ですが。
 バリエーションがいくつかあって、これは鳩、開運ハンコのような友愛の文字、支部名、標語という組み合わせのタイプ。
 設置されてからずいぶん経っていそうな風情で、年月を経ていい具合に古びており、信州の風景にすっかり溶け込んでいるような気がしますが。
 どうでもいいけど「友愛」と聞くと、笑ウせえるすまんの原作「黒イせえるすまん」で喪黒福造が持ってた名刺に「友愛事業団」と書かれていたことを思い出します。
 こちらは標語の入っていない小型サイズの地名カンバン。手書き文字がいい風合い。
 長野県はなぜか大字(行政地名)がやたらと広範囲を示すことが多く、番地も4ケタ、5ケタはあたりまえなので、住所聞いただけではどのあたりなのか見当もつかないことがよくあります。しかし友愛会のカンバンは小字や地域で使われている通称名を表記しているので、たいへんわかりやすい。
 日本禁煙友愛会の本部は伊那市にあります。2007年2月、飯田線の伊那市駅と伊那北駅の間の裏通りを歩いていたら、本部らしき建物(民家)をたまたま見つけた。実際にどんな活動をしているのか?機会があったら話を聞いてみたいものです。
 最近の活動の一例。左は伊那市中心部、国道153号と361号が交わる入舟交差点の一角に立っている新しい広告塔。さすがお膝元!のインパクトです。
 右は同じく伊那市中心部の商店街にある新しい地名カンバン。鳩と「友愛」の文字はマルの中に納まっちゃってて、昔のバージョンの方が芸が細かい。

左)高森町小川 2007.05.16
右)飯田市松尾新井 2007.05.16

左)高森町出原 2007.05.16
中)駒ヶ根市中央 2007.02.22
右)飯田市上久堅 2005.06.03

左)伊那市伊那 2007.02.22
右)伊那市伊那 2007.02.20

伊那市東伊那塩田 2007.03.08

 こちらはお手軽な貼り付けタイプ。褪色して禁煙の文字しか残っていませんが。
 錆び錆びの赤穂信用金庫のカンバンも気になります。これは駒ヶ根市にあった信金で、平成15年に伊那信金と合併してアルプス中央信用金庫になりました。

今回は「火」の特集にちなんで防火の看板を。湖西市の入出に行くと、いたるところに「屋外禁煙」と大書された看板が貼り付けてあるのを目撃します。なんでも明治二十七年に村で大火事を出して以来の決まりだとか。素晴らしい!こういう看板は、歩き煙草をする人が後を絶たない名古屋あたりに出しておくべきですね。

「そう」13号(2006.12発刊)掲載


湖西市入出 2006.02.17

2009.04.16加筆修正

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